新雪 (小説)
『新雪』(しんせつ)は、藤澤桓夫の小説、それを原作とした映画作品、およびその主題歌の題名。
『新雪』は、まず、藤澤桓夫による新聞連載小説として、1941年11月24日から1942年4月28日まで『朝日新聞』に154回連載された[1]。連載開始後に太平洋戦争が始まるという時期であったが、「さわやかな恋物語」として好評となり、1942年に五所平之助監督によって大映で映画化されて[2]、水島道太郎、当時は宝塚歌劇団に在籍していた月丘夢路と美鳩まりが主演して、灰田勝彦が歌った同名の主題歌もヒットした[1]。
内容は、国民学校の青年教師・蓑和田を主人公に、女医と恩師の娘との淡い恋愛模様を描くものであった[1][3]。
戦後も、楽曲「新雪」は様々な歌手によって歌われた。また1962年と1966年には、テレビドラマも制作された。
映画
[編集]映画『新雪』は、五所平之助監督のもとで、館岡謙之助の脚本によって大映で製作され、1942年10月1日に公開された[3]。
概要
[編集]本作は大ヒットし「大映初めてのヒット作」と評される。
大都映画のスターだった水島道太郎と、当時は宝塚歌劇団に在籍していた月丘夢路が主演した。
おもな撮影地は、兵庫県神戸市の高羽国民学校(後の神戸市立高羽小学校)で、撮影は1942年夏に行なわれ、当時の同校の児童も5年生、6年生を中心に20人ほどがエキストラとして撮影に参加した[1]。映画公開時に、エキストラとして参加した児童たちが映画館へ見に行ったところ、恋愛映画であり子どもは入場できなかった、というエピソードも伝えられている[1]。
戦後長く、プリント等が残っていない「幻の映画」とされたが[1]、1996年に東京国立近代美術館フィルムセンターがロシアのゴスフィルモフォンド(ロシア国立映画保存所)を現地調査した際に、存在が確認された[4]。後に東京国立近代美術館フィルムセンターがこのフィルムを購入した[1]。現存するのはオリジナル124分のうち84分相当であるが[3]、実際に上映可能な74分相当分だけでもストーリーは理解できるという[4]。
スタッフ
[編集]- 脚色:館岡謙之助
- 演出:五所平之助、蕪木淳、小松原力、小倉泰美、菅野恒三
- 撮影:岡野薫、兼井和郎、中村壽郎、松橋梅夫、井上雅夫
- 録音:長谷川光雄、増田一美
- 美術:今井高一、木村威夫
- 照明:伊東辰雄、安藤眞之助
- 装置:小山照吉
- 装飾:三田正武
- 小道具:河島仁
- 背景:西牧恭平
- 園藝:坂根音次郎
- 工作:島田二朗
- 衣裳:坂口福松
- 美髪:寒川ヤスエ
- 技髪:牧野正雄
- 音響効果:高野藤夫
- 普通寫眞:山本松次郎
- 華道:田島素峡(草心流家元)
- 現像:東洋現像所
- 音樂:久保田公平
- 編輯:辻井正則
- 製作担当:大中豊
- 配給:映画配給社
主題歌
[編集]ビクターレコード レコード番号:A4351号
出演者
[編集]- 湯川家
- 丈亮:高山徳右衛門
- 保子:美鳩まり
- おきくさん:武田サダ
- 片山家
- 進:白川博
- 母:久野あかね
- 正木家
- 信夫:井染四郎
- 淑江:國分みさを
- 徳井家
- 長谷家
- 靜枝:近松里子
- 英雄:小林直樹
- 國民學校
- 父兄會
- 隣組
- 食料品店主人:見明凡太朗
- 高村さん:高村榮一
- 菊地さん:菊地良一
- 三井の奥さん:三井知惠
- 煙草屋のおばさん:小峰千代子
- 南條さん:南條はるみ
- 鴨川の奥様:鴨川百合子
- 仲居:光川京子
- 看護婦:高松律子
- 若い夫:松原輝夫
- 若い妻:文野朋子
- 少年:奥岡榮二郎
- 賛助出演
- 劇團新兒童劇場
楽曲
[編集]映画『新雪』の主題歌は、映画と同名の「新雪」として佐伯孝夫の作詞、佐々木俊一の作曲によって書かれ、灰田勝彦が歌い、映画の封切りとともに1942年10月に発売されて、ヒット曲となった。
戦後も、楽曲「新雪」は様々な歌手によって歌われている。NHK紅白歌合戦では、第3回(1953年1月2日)に映画の主演女優であった月丘夢路が、後述のテレビドラマではフランク永井が、「名曲紅白」というテーマが掲げられた第33回(1982年12月31日)に新沼謙治が、それぞれ歌った[5]。
「新雪」は、佐伯孝夫の作詞作品を集めた佐良直美の1972年のカバー・アルバム『鈴懸の径 -佐伯孝夫 優しい詩集-』にも収録された。
「新雪」は灰田勝彦の歌の中では、カラオケで歌われる機会が最も多い曲のひとつとされている[6]。
テレビドラマ
[編集]1962年版
[編集]1962年2月1日と同年2月8日の2回に渡って、日本テレビ系列の『武田ロマン劇場』(武田薬品工業一社提供。木曜21:45 - 22:30)で放送。
出演者
[編集]1966年版
[編集]1966年8月30日から同年12月27日まで日本テレビ系列で放送。全18回。前番組『母の曲』に引き続き、サンスターシオノギ(サンスター歯磨=現:サンスター)の一社提供。放送時間は毎週火曜21:30 - 22:00。
出演者
[編集]スタッフ
[編集]- 原作:藤澤恒夫
- 主な脚本:辻久一
- 主な監督:井上芳夫、大塚莞爾(デビュー作)
- 制作:NTV、大映テレビ室
日本テレビ系列 武田ロマン劇場 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
新雪
(1962年版) |
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日本テレビ系列 火曜21時後半 サンスターシオノギ一社提供枠 |
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新雪
(1966年版) |
出典・脚注
[編集]- ^ a b c d e f g “幻の映画「新雪」、60年ぶりに光 灘の高羽小が舞台”. (2004年11月7日). p. 34 - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ “藤沢桓夫さん死去 大阪文壇の長老格”. (1989年6月13日). p. 1 - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ a b c 新雪 - allcinema
- ^ a b “ロシアで発見“幻の日本映画” 「新雪」兵庫県宝塚市で27日上映 関西初公開”. (2004年4月15日). p. 30 - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ 灰田勝彦は、紅白歌合戦には6回出場したが、紅白では「新雪」を歌っていない。(灰田勝彦#NHK紅白歌合戦出場歴)
- ^ “灰田勝彦 カラオケ人気曲ランキング”. カラオケ機能徹底解説 カラカイ. 2014年2月6日閲覧。